2024年3月に地元である佐賀に帰省する用事ができたため、せっかくだから地元を自分の自転車で走ろうと思い、羽田空港から福岡空港まで飛行機輪行にチャレンジしました(奥さんの自転車もあり、初回から2台の飛行機輪行です)。
なお、航空会社はANAを利用する前提で書いています。
この記事の目次
飛行機輪行用の輪行袋の検討
203cm以内規定は諦める
ANAの預け入れの規定を見ると、三辺合計が203cm以内、20kg以内であれば預け入れできるとありますが、203cm以内収めるにはバイクポーターのようなハードケースに収納する必要があります。ハンドル等も外すなどして分解するパーツが多くなるため今回は見送りました。
三辺合計が203cmより大きくなる場合は、事前の連絡は必要となりますが預けることは可能です。
ということで、今回は事前連絡をする前提で輪行袋を探すことにしました。
Tips: 大型手荷物の預け入れはLINEで事前申請
なお、申請はLINEで行えて楽だったのでおすすめです。
↓のページにLINEの導線があります。
【国内線】スポーツ用品(スキー板・スノーボード・サーフボード・ゴルフバッグ・釣り道具・ダイビング機材・ラケットなど)は手荷物として預けられますか。
輪行袋はオーストリッチ OS500に決定
検索すると、飛行機輪行のだいたい定番は「オーストリッチのOS500」というクッション性の高い輪行袋が紹介されていたので、こちらを購入。
ただ、ホイールも収納できるとあったので、これ一つで行けるかとおもったのですが、収納してみるとけっこうギチギチ…。
入れ方次第なのだと思いますが、チャックを閉めるときに、フレームやホイールが割れてしまうのではないか…という不安があったため、別途ホイールバッグも購入しました。
Di2の内蔵バッテリーはどうなる?
飛行機輪行について調べると、Di2のバッテリーが非常に厄介な存在であることに気づきました。
いくつかの記事を読んでも、時期や利用する空港、対応する職員さんによって、確認内容が違っていました。
SHIMANO Di2の内蔵バッテリー BT-DN300 は棒状になっており、シートポスト内に収納されることが多いようです。
しかし私の CANYON のバイク(Endurace CF SL 8 Di2)は、ダウンチューブに収納されていました。
しかもボトムブラケットを外さなければ取り出せないようで、輪行の度に取り外すことはさすがに現実的ではありません。
シートポスト内であっても内蔵バッテリーを外さずに飛行機輪行したいと思い調べると、ANAのサイトにこのような記載がありました。
電子機器本体
https://www.ana.co.jp/ja/jp/guide/boarding-procedures/baggage/domestic/caution-restriction03/
リチウム金属電池はリチウム含有量が2g以下のもの、またはリチウムイオン電池はワット時定格量が160Wh以下のものは機内持ち込み・お預けともに可能です。
(注意点)
リチウム電池を内蔵した電子機器を預入手荷物としてお預けになる場合は以下の措置を施してください。
本体の電源を完全にお切りください。(スリープモード不可)
本体を強固なスーツケースまたは衣類などで梱包するなど保護をしてください。(偶発的な作動や損傷による発火を防止するため)
とありますので、Di2のバッテリーが内蔵された自転車のフレーム は「リチウム電池を内蔵した電子機器本体」と捉えられます。
また、Di2内蔵バッテリーのワット時定格量は製品ページに 3.7Whと記載があり、160Wh以下となるため預け入れは可能そうです。
公称容量 (Wh) | 3.7 |
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後は「本体の電源を完全に切る」必要がありますが、Di2に電源オフボタンはありません。
内蔵バッテリーと繋いでいるフロントディレイラー、リアディレイラーそれぞれのケーブルを外せば、電源オフしたものと見なされ、預け入れできました。
ANAに事前問い合わせして、上記のやり方で問題ない旨の回答をもらっています。
お問い合わせについて、お知らせいただきましたロードバイクは
受託手荷物としてお預かり可能な旨、確認が出来ておりますので
ご安心いただければと存じます。お預けの場合は、バッテリーと接続しているワイヤーは
自転車から外していただくことに加えて、偶発的な作動や損傷を
防止するための措置(強固なスーツケースへの梱包、衣類などによる保護など)を
執っていただく必要がございますこと、あらかじめご了承ください。また、搭乗日当日も、お持ちのバッテリーについて
ANAへ問い合わせした内容への返答
ご確認させていただく場合がございますので、恐れ入りますが
製品の詳細が分かる資料をご持参いただきますよう
お願い申し上げます。
ということで前置きが長くなりましたが、Di2のロードバイク x OS500で飛行機輪行ができそうだと分かりました。
ここからはOS500の輪行袋に自転車を収納する方法について説明してきます。
何度かシミュレーションと実地テストを踏まえて、できあがった手順が以下になります。
オーストリッチOS500 輪行手順(慣れれば10分で完了)
- 左足のペダルを外す
- 機内持ち込みするサイコン・ライト等のリチウム電池搭載機器を外す
- ギアをインナー x トップにする
- バイクを裏返す
- 前後のホイールを外す
- 前後のブレーキにスペーサーを噛ませる
- フロントにエンド金具を装着しスルーアクスルを戻す
- 外したホイールにスプロケカバー・ディスクカバーを取り付け
- タイヤの空気を少し抜く(任意)
- ホイールバッグへ収納
- 各ディレイラーと接続するエレクトリックワイヤーを取り外し
- リアディレイラーを取り外してフレームに固定
- リアのエンド金具を装着しスルーアクスルを戻す
- チェーンカバーでチェーンリングを保護
- ハンドルをチェーンリング側に切ってOS500に収納し完成
各手順ごとに写真付きで解説します。工程が多く見えますが、慣れたら10分で終わるくらいになりました。
左足のペダルを外す(1/15)
いきなりですが、ペダルを外すところからスタートします。
なぜこの工程を最初に持ってきたかと言うと、忘れてしまうと後々面倒になる工程だからです。
普段、電車輪行する際にペダルを外すことはあまりありません。
ペダルを外すにはそれなりに力をかける必要があり、特にホイールを外した後にペダルを外すのは困難です。
ペダルは回転方向とは逆方向に回すと外せます。ペダルを外すときは、携帯工具の短い六角レンチより、長さのある六角レンチがやりやすかったです。
グッと力をいれることになるので、はずみでホイールやチェーンリングに手をぶつけないように気をつけて行ってください。
なお、ペダルを外さずOS500に収納できないかとトライしてみたのですが、私のバイクも奥さんのバイクもチャックが締まりませんでしたので、ペダル外しは私の場合は必須の工程でした。
「飛行機輪行、まずペダルから」ですね。
ペダルはなぜ左だけ?
最初は両方のペダルを外して収納していたのですが、結局ハンドルをチェーンリング側に切って収納するため、空間が生まれます。そのため、右足ペダルを外す必要はありませんでした。
機内持ち込みするサイコン・ライト等のリチウム電池搭載機器を外す(2/15)
リチウム電池搭載の機器は機内持ち込みする必要があるためすべて外します。
前後のライトやサイクルコンピュータといった機器は忘れずに外しておきましょう。
外した機器類はサコッシュ等にまとめて持ち込みます。
その他に、電動ポンプ等がツールケース内にも機器が入っている場合があります。
忘れずに機内持ち込みの荷物に移し替えておきます。
※チェーンオイルは預け入れ手荷物・持ち込みともに基本NGなようですね。
必要な場合は、小さいサイズのオイルを現地調達して乗り切ります。
ボタン電池や乾電池は?
リチウム電池搭載の機器について書きましたが、ボタン電池や乾電池などはどうなの?と思って調べました。
【国内線/国内ツアー】手荷物で機内に持ち込めないもの、預けられないものはありますか。
品目 | 機内持ち込み | お預け(預入) |
乾電池、ボタン型電池 | 可 | 可 |
Di2だとブラケットにもボタン電池がついていますが、そのままで問題なさそうです(実際に確認されることもありませんでした)。
ギアをインナー x トップにする(3/15)
バイクを裏返す前に、ホイールを外しやすくするためにギアを変えておきます。
フロントギアはインナーへ、リアのギアはトップにするとホイールが外しやすくなります。
バイクを裏返す(/15)
ハンドルのブラケットとサドルの三点で支えるようにバイクを裏返します。
このとき、ライトやサイクルコンピュータのマウントが三点よりも飛び出しているとマウントに傷が入ったり、バイク自体が安定しません。あらかじめ確認しておきます。
ちなみに、ひっくり返すとブレーキのエア噛みが心配といった声を聞きますが、電車輪行含め何度もひっくり返していますが、ブレーキが効かなくなったことは過去一度もありません。
前後のホイールを外す(5/15)
フロントのスルーアクスルを緩めてホイールを取り外します。
同様のリアのホイールも取り外します。
スルーアクスルを緩め、ホイールを外します。
外したホイールは一旦壁に立てかけておきます。
前後のブレーキにスペーサーを噛ませる(6/15)
ブレーキレバーに不意にあたって、ブレーキパッドがせり出さないようにスペーサーを噛ませておきます。
フロントにエンド金具を装着しスルーアクスルを戻す(7/15)
フロントフォークにスルーアクスルを戻す際、エンド保護のパイプを入れておきます。
保護パイプがあることでフロントフォークの横からの衝撃に強くなります。
電車で輪行する場合はこの工程は行いませんが、飛行機輪行の場合は輪行袋を横に倒されることがあるためフロントフォークにもエンド金具を装着するようにしています。
オーストリッチ(OSTRICH) 12mmスルーアクスル用エンド金具 フロント用
外したホイールにスプロケカバー・ディスクカバーを取り付け(8/15)
ホイールバッグにしまう前に、スプロケットとディスクローターにカバーを取り付けます。
間違えるとオイルがついて大変なので、スプロケ用とディスク保護のカバーは色を分けています。
私はR250のカバーを色違いで3枚用意して使っています。
タイヤの空気を少し抜く(任意)(9/15)
飛行中は地上と比べて20%程UPするそうです。
ANAのサイトでも預け入れ前に空気を抜くようにと記載がありますが、使っているタイヤの最大空気圧に対して、何bar(psi)で運用しているか次第かなと思います。
私はMAX7.3bar(105psi)のタイヤに、普段5bar程度で乗っているので空気は抜きませんでした。仮に20%upしたとしても、6barなのでまだ余裕があります。
ご自身のタイヤと普段の空気圧をチェックして必要(心配)なら抜いておきましょう。
その場合は携帯ポンプ等を忘れず持っていきましょう。
ホイールバッグへ収納(10/15)
ホイールをバッグに収納します。
収納したら、邪魔にならないところへ置いておきましょう。
各ディレイラーと接続するエレクトリックワイヤーを取り外し(11/15)
フロントディレイラーと接続するエレクトリックワイヤーを取り外し
写真はアルテグラ(R8150) のフロントディレイラーです。
フロントディレイラーのゴムカバーの中を伝ってL字にプラグが刺さっています。12速のDi2であれば多少形は違えど、構造は同じかと思います。
こちらの工具(TL-EW300)をゴムカバーの溝に差し込み、エレクトリックワイヤーを引き抜きます。
工具(TL-EW300)を使わずともゴムカバーをつまんで、まっすぐ引き抜いても大丈夫そうでしたが、公式のマニュアルに従います。
工具を差し込み、横方向に引き抜きます。
なお、外したゴムカバーを紛失しないように注意しましょう。
輪行時は別の小袋に入れておきました。
リアディレイラーと接続するエレクトリックワイヤーを取り外し
リアディレイラーも同様にまず、エレクトリックワイヤーを外していきます。
まず、保護用のゴムカバーをつまんで上に引き上げます。
ゴムカバーを引き上げると、プラグが露出しますので、工具を使ってテコのように動かして引き抜きます。
リアディレイラーを取り外してフレームに固定(12/15)
いよいよ、リアディレイラーを外します。
といってもボルト一本で取り付けされているので外すのは簡単ですが、チェーンも触るので
ゴム手袋やビニール手袋を装着して作業しましょう。
なお、外すボルトを間違えないように注意しましょう。
外すボルトはディレーラーハンガーとつながっているボルトです。
私は空港で隣のボルトを緩めてしまい、戻すのに苦労しました…
チェーンとつながっていますので、フレームに傷がつかないように注意しながら、リアディレーラーとチェーンを袋に入れます。使い捨て前提なのでビニール袋に突っ込みます。
ビニール袋に入れたディレーラーとチェーン(の一部)をクロスのような布でくるみゴムで止めておきます。
最後に、ゴムバンドでフレームに固定しておきます。
リアのエンド金具を装着しスルーアクスルを戻す(13/15)
外したリアディレイラーをフレームに固定する作業が終わったら、フロントと同じくエンド金具を装着します。ここではオーストリッチの縦型輪行用のエンド金具を使いました。
オーストリッチ(OSTRICH) 12mmスルーアクスル用エンド金具 リア用
こちらもフロントフォークと同様、横からの衝撃でフレームがダメージを受けないようにするためです。
チェーンカバーでチェーンリングを保護(14/15)
フロントのチェーンリングの歯がむき出しになっていますので、チェーンカバーをかけておきます。
チェーン(の大半)はビニール袋に入っているため、チェーンリング部分を保護(むしろOS500の内側を保護)することが目的です。
オーストリッチ(OSTRICH) 輪行アクセサリー [チェーンカバー] YD-268
ハンドルをチェーンリング側に切ってOS500に収納し完成(15/15)
いよいよOS500にフレームを入れます。ハンドルが真っ直ぐだとうまく入らないため、ハンドルを右側に切って収納します。
ハンドルを切る方向はチェーンリングがある側(ディレイラー側)です。
左足のペダルは外してありますので、ペダルがある側にハンドルを切ります。
その状態で OS500 に入れます。
ペダルは片側しか外していませんので、重量差で左側のクランクが上がってきますが、うまいこと回転させつつチャックの中に収めます。
使った工具類等も一緒に入れて、最後にOS500のチャックが閉まれば無事完了です。
この状態で閉まらない場合、サドル高が影響している可能性が高いです。その場合はサドルを低くしてみてください。元の高さに戻す時も考えて、サドルの高さをメモっておくか、目印をシートポストにつけておきましょう。
いざ手荷物カウンターへ
無事収納されたら、空港のカートに乗せて手荷物カウンターへ向かいます。
時間の余裕をもって
なお、大型の手荷物ということもあり、預け入れには奥さんの分も含め20分以上の時間がかかりました(羽田では検査員の方が到着するまでに10分程度は待ちました)。列に並ぶ時間も考慮し、時間に余裕を持って行動したほうがよさそうです。
この面を上に
OS500には透明のポケットが外側についており、ここに送り状や書類を入れることができるのですが、職員さんに「このポケットがある面を上にお願いします」と伝えました。
ホイールバッグも同様に、スプロケットが上面になるように「ロゴが印刷された面を上にお願いします」とお願いしました。
預け入れ時に提示する可能性がある書類を印刷しておく
SNSの経験談を元にいくつか提示書類を印刷して、すぐに取り出せるようにOS500のポケットに入れておきました(幸い、今回の旅では使うことはありませんでした)。
- Di2の内蔵バッテリー情報(ワット時定格量Whが分かる画面)
- ディスクブレーキのオイルの製品安全データシート(ブレーキホース内のオイルの情報)
- ANAに問い合わせして「Di2内蔵バッテリー付きで自転車預け入けOK」と返信もらったメール
輪行状態から元に戻すときに気をつける点は?
無事、目的地の空港で自転車を受け取ったら組み立ての工程がありますが、やったことを逆順で行っていけばOKです。
リアディレイラーの取り付け、エレクトリックワイヤーの接続
普段の輪行ではやることがない工程なので、気をつけポイントを記載しておきます。
リアディレイラーを取り付けるときはマニュアルにあるストッパープレートと爪がぴったりくっついている(隙間がない)状態にして取り付けます。
リアディレーラーのプラグを差す時も、取り外し時につかった工具を使いましょう。
まっすぐ差し込むとカチっと音がなりランプがつきます。
保護カバーを戻すのを忘れずに。その他は通常の輪行と同じ工程で悩む箇所は少ないでしょう。
以上、初めての飛行機輪行を無事に終えたOS500を使った輪行手順でした。参考になれば幸いです。
感想と余談:
OS500のクッションの厚みは安心感があった
普段の電車輪行だと薄い生地のものを使っているので、衝撃に敏感になりますが、OS500のクッションは厚みがあり、かなり安心でした。
ちょっと当たったとしても、ガン!といった音も衝撃もなくしっかり吸収してくれます。
飛行機輪行は自分の手元を離れるため、これくらい安心できるものが良いですね。
OS500は現地空港のロッカーへ
現地で自転車を組立てたあと、OS500を背負って移動するのは現実的ではありません。
私は空港のロッカー(大サイズ)に預けました。
福岡空港では600円/日で使用開始日から7日以内であれば預けられます。
コインロッカー | 福岡空港 FUKUOKA AIRPORT
次はSRAMにしようかな…
SRAMの電動変速であれば、バッテリーが工具不要で外せるため、ケーブルを抜いたりする必要がありません。この点がとても魅力的に感じました。次に自転車を買い替えることがあれば、SRAMにしようかな…と考えちゃいますね。